藍染

小さな小さな藍の種。農的な営みの原点「種に始まり種に終わる」に、年々の主人公たちが物語を重ねて、十数年余り。霜が降りる前にたわわに実った穂を摘み、藍を育んでくれた大地に感謝して、その年の畑仕事を終えます。そして、手もみで種を選別しながら、これまでの活動を見つめ直し(今、保育でも振り返りが大切!)、卒園式のときに子どもたちの素敵な言葉が添えられて種が継承されます。藍とともに生活をしてきた子どもたちの1年間の成長を実感し、次年度への期待をあらたにする瞬間でもあります。
(SPINNUTS No.101「0歳からの草木染」より引用 陽だまり保育園「藍先生」こと宇都宮大学佐々木和也教授執筆)

春、小さな藍の種を蒔く日。藍先生から種を蒔くとは、“種に「もうまいてもいいですよ」という『時(とき)』を知らせる”ことだと教えていただくこの日。小さな種を手に、卒園式で継承された種の重みを実感しながら、これからはじまる藍物語のスタートを、年長児はワクワクして迎えることになります。「これからは、みんなが藍のお父さんとお母さんになるんだよ」と藍先生に託してもらえた責任を果たすべく、観察・水やり・天敵(ニワトリ、笑)から芽を守る行動を主体的に話し合いながら活動していくことになります。

種まき

夏、種蒔きから1ヶ月後に、無事に畑へと定植した藍の苗は、その後ぐんぐん大きくなります。とともに、雑草も大きくなります。そこで子どもたちの定期巡回がはじまり、雑草を取りに、雨の少ない時期には水やりに・・と畑へ向かい、たくさんのお仕事があることを感じます。自然の恵みを享受するには、労働が必要なのだと、実感する日々です。暑い盛りになると、子どもたちの背丈程もある大きく育った藍草24キロを手で収穫し、3樽の『沈殿藍』を仕込みます。炎天下で発酵させた沈殿藍は、独特な匂いが特徴。小さい仲間たちには「臭い」匂いも、年長の子どもたちにとっては、次に訪れる「勝負服」への取り組みを心に描きながらの誇るべき作業。時折笑みを浮かべてこの取り組みに集中していきます。

草むしり

秋、キャンプ・運動会・登山、と力試しの行事が続くこの季節に、子どもたちを支えてくれる『藍染Tシャツ』 毎日の藍瓶を攪拌する作業も生活の中で位置付き、休みの日でも自ら親に頼んで藍当番に来てくれるのも子どもたちの主体的なとりくみからでした。 そして、いよいよ思いを込めて絞り模様をつけた、まっしろなTシャツを染める日がやってきます。意欲的な心も、数分間体勢を変えずにじっと染め続けられる体の力も備わってきたこの時期に、小さい時からずっと憧れてきた『藍染め』を経験することとなります。

染め作業

冬、次の命を生み出すための「種採り」を行います。こうして、開園当初から取り組まれている『藍プロジェクト』は継承されてきました。そして、この暮らしの中の営みが、陽だまり保育園の歴史の中で、代々年長児に向け紡がれてきた壮大な物語だと言えるのです・・・ 憧れの『藍染めTシャツ』は、年長児大空組としての誇りを纏い、仲間と暮らす中で「必要だから」染めあげます。力試しの取り組み行事では心を支え、仲間とともに着ることで、一体感や協同性を育みます。しかしそれだけにとどまらず、日々の暮らしの中の「ここぞ」という、いわゆる「勝負の日」にも自ら選んで着用することにしています。それは、この『藍染めTシャツ』が、パフォーマンス的なユニフォームとは少々意味合いが違うことを示しているからです。さらには、このとりくみからも、陽だまり保育園の保育が画一的ではなく、自らが「選択できる」暮らしがあるのだという、一つの形を示しているのだと、おわかりいただけると思います。

勝負の日
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